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第六回武術談義:五輪柔道考察

2008.08.19 - 武術・武道
第五回に引き続き、武器術と徒手空拳の話をしようと思ったのですが、五輪の結果をうけて予定を変更させていただきます。間合いの妙などは、次回やりますので。

さて、巷ではオリンピック熱に沸いておりますが、北京オリンピックの柔道日本勢。お家芸であるにも関わらず金メダル4個という過去最低の結果に終わりました。残念なことですが、今回の五輪にはいくつか違和感を感じました。

柔道は、高校の頃に少しかじった程度ですが私なりの意見というかそういうのをまとめてみます。


今回のオリンピック。男子は金メダルたったの2個という結果でしたが、皆さん見ていてどうでした? ちょっとでも柔道を見てきたかたなら、今回の試合はどうも違和感を感じた。そんな人が、殆どじゃあないでしょうか。

まず、試合が始まると選手は身を低くする。柔道は襟と袖を掴み、相手を崩す。ところがどうだろう、日本人以外の外国人選手はいきなり足を取りにいっている。そして強引に相手をねじ伏せ、有効や効果を奪っていく。最後はポイントの多い方が勝ち。大体こんな感じだろうか。4年前のアテネとはえらい違い、あの時は豪快な一本勝ちが決まるたびに見ている側もスカッとしたものだ。

しかし、外国人選手の殆どは今回まともに組みあわない。それどころか、胴衣が乱れているのに直さない。足を狙うのは反則ではなく、「朽木倒し」などの技として認められるが……あれじゃレスリングのタックルと変わらないじゃないか――と思っていたらやはり、外国では柔道はもうレスリングと同列で語られているようです。

「ジャケット・レスリング」というのが、欧米での柔道の呼び名だそうです。なんじゃそりゃ、と思ったが着衣のままのレスリング、というのが欧米式柔道だそうで。要するに日本的柔道ではなく、レスリングの理論を持ち込んで力で相手をねじ伏せ、ポイントを稼ぐ。それが、欧米式の柔道、いやJUDOだとのこと。国際ルールはよく分からないが、別に一本とらなくてもポイントで勝てるようになっているようで、そのポイント稼ぎを重視しているようです。
ルールにのっとった動きだから、かまわない。むしろ、伝統にこだわりすぎて世界のJUDOスタイルに遅れをとった結果だ――mixiのあるニュース記事でそんな記事がありました。世界的に力技オンリーの柔道が主流となったら、非力なアジア人には勝ち目はないかもしれません。ただし、力に力で対抗するのは本来の「柔道」ではありません。柔道の「柔」と言う字、これは相手が力で対抗してくるときにその力を利用して投げ、極め、相手を制圧するという意味がこめられています。いわば、日本武術の真髄といっても過言ではないでしょう。しかし、今じゃ力と力の戦いとなり、そこに「技」が入り込む余地はない。どうやら柔道も、伝統武術が歩んできた道を順調にまい進しているようです。

空手が、近代格闘技に勝てないからといって伝統スタイルを捨てさり、リングの上でキックの真似事をしたり、体力が充実している学生に「勝つこと」を唯一の価値と教えた指導者が溢れた結果、刀法や理合のない「あてっこ」剣道になってしまったり。およそ、伝統武術がスポーツ化するとそこに横たわる精神性や技法というものが失われていく。洋の東西を問わず、伝統武術が歩んできた悲劇の道です。およそ武術というものが殺し合いである以上、スポーツにするにはある程度失われるものはあるのは仕方ないとはいえ、かつて嘉納治五郎翁がつくった「柔」の道が廃れるとは悲しいことです。

ルールというものは、スポーツをやる上では必ずあるものです。しかし、ただ「勝てば良い」というのは武道の精神に反するような気がします。相手を尊び、己に克つのが武道です。ただ、勝った負けたは武道になじみません。とはいうものの、オリンピック競技になった時点ですでに柔道の武道性は失われたかもしれません。いい例が、勝った後のガッツポーズ。剣道で同じことをすると、一本が取り消されます。なぜか。それは「互いに死力を尽くして戦った、その相手に対して失礼である」という観点からのものです。「それなら他のスポーツも同じじゃないか」といわれるかもしれませんが、武道は戦場での技術から生まれたものです。極端に言えば、勝った方は生き残り負けた方は死んでいる。そこへ、ガッツポーズ(なんて言葉は当時はなかったでしょうが)のように、勝利をあからさまに喜ぶ行為は「相手の死を冒涜する」という行為になるわけです。剣道ではこれを無理やりルールに組み込むことで精神性をなんとか保っていますが、柔道はもはやこの精神は失われたといえるでしょう。今後も柔道のスポーツ化が進み、欧米で言われている「ジャケット・レスリング」が普通の呼び名になる日も近いかもしれません。

日本発祥の柔道が世界の方にあわせなければならないのか、なぜ世界の方が原点に立ち返ろうとしないのか。と思ったのですが、おそらくこうした武道の精神性は万人に受け入れられるのは難しいのでしょう。「道」という概念は、日本独自のものですから。剣道、空手、弓道などなどそうしたものが五輪競技になると同じような運命をたどるかもしれません。空手から派生したテコンドーも、完全にスポーツ的な動きですし。

では日本も「ジャケット・レスリング」をやるしかないのか、しかしそれをやるともはや完全に「柔道」は廃れるでしょう。それはキックのリングに空手家が乗り込み、同じようなキックスタイルをとるようなもの。K-1などで空手出身となのっていても、空手をやらないのでは「空手家」を名乗る意味はない。「ジャケット・レスリング」をやるのなら、柔道家である必要はない。そこで、もう一度「柔」の理論に立ち返る必要があるでしょう、ほかならぬ日本が。力対力ではなく、力で来た相手を技で返す術を研究する必要がある。是非、日本柔道、とくに男子柔道の選手の方々は今回の外国人選手の動きをよく観察してそれをいかにして柔道の動きで捌くかを検討してもらいたいです。武道は非力なもの、力の足りぬもののために進化してきのですから。

故・三船久蔵氏は小柄な体格ながら、いやだからこそ相手の力を体捌きだけで投げる神業「空気投げ」を編み出し、「柔道の神様」と呼ばれました。そこまでやらずとも、日本柔道にもこのような本物の柔道理論に基づいて対「ジャケット・レスリング」技を編み出してもらいたい。そうして4年後、再び日本が王座に返り咲き、「これが『柔道』だ!」と世界にアピールしてもらいたいものです。

んで、そのためになにをするべきかとか素人の私が言ってもあれなんで、今回はこの辺で。第七回は、また武器術に戻ります。変更が多くてすみませぬ。
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   Comment(8)   TrackBack(0)    ▲ENTRY-TOP

Comment

なるほど - 現

たしかに今回の五輪柔道はなんか面白くないなー、と思ってましたが、なるほどそういうことだったのかと。

元々は馬から相手を落としてそのまま速攻で息の根とめるための武術だったような話をうろ覚えで思い出してみたりしてますが、スポーツとして体系化している現在の柔道は何よりもやっぱり技が魅せどころですよね。力で持ってくだけならそれこそ素人の喧嘩と変わらないですし。

うーむ。柔道がこんな風に広がってたとは考えもしなんだ。仰るように、日本人にはジャケット・レスリングなんて概念をぶち壊すくらいに完膚なきまで勝ってほしいですね。というか本当詳しいなあ教祖さま。
2008.08.20 Wed 00:12 [ Edit ]

スポーツと「道」か… - 神月きのこ

柔道を見るとYAWARAが読みたくなります神月です。
そんなことはさておき。
本当にただ倒せばいいんだろと言わんばかりの欧州勢の柔道には疑問を感じますね。柔よく剛を制すの精神は今いずこ。
技が綺麗に決まって一本、それが最も魅力的な柔道の形だと思うのですが。

柔道にしろ体操にしろ、どんどん「美しさ」がないがしろにされていってる気がするなあ。
2008.08.21 Thu 09:55 [ Edit ]

背負いしか出来ませんが何か?(笑) - 針井 龍郎

 くっはーっ! めちゃくちゃ同感っすよ、兄ぃ! 博識ぶりはさすがです!

 ジャケットレスリングですか、ムチャクチャですな。柔道じゃないやんね。剛で剛を征するんじゃったら、レスリングでもやっとれっつーの。あ、だからジャケットレスリングなのね。

 あれですな、民族性が出てますね。欧米諸国は『力には力を』っていう考え方が強いですからね。逆にアジア諸国では、『相手の力を利用して』ってな感じですからね。

 しかし、ジャケットレスリングじゃ日本人は勝てんですよ。体格からして差がありますかんね。今後よりいっそうの発展を目指すのであれば、もう一度原点に戻らねば、ですよね。

 あと試合後のガッツポーズ。勝った方は言うまでもありませんが、負けた方もあり得ないっす。アンタ、なに畳にねっころがってボーっとしてんの。負けたんなら潔く立って、相手に礼をしなさいよ、ってなもんです。いや、悔しいのはわかるけどね。

 話変わって、当てっこ剣道。多いですよね! 小学生低学年なんて、露骨に影響受けますからね。まず面を打ちにいかない。コテばっか狙いにいくんすよね。

 ま、審判が気剣体一致の判定をしてる限り、剣道じゃなくなる事にはならないと思いますが。なにしろポイントなんかないですからね、一本とるかとらないかですもんね。

 おっと、ついうっかり長くなりました。武道関係の話になると、ついつい食いつきたくなるんすよね。やー、いっぺんチャットかなんかで、心行くまで語り合ってみたいもんです。私の都合上、今年中は無理なんですが……。そいでは!
2008.08.21 Thu 20:07 [ Edit ]

コメ一本! - 俊衛門@日本万歳

>現殿
柔道の原型、柔術は戦場での組みうち技法から生まれました。馬から叩き落として、地面にねじ伏せ、鎧の隙間から止めを刺すという結構乱暴な技です。その時はまだ術理というものがはっきりしていなく、それこそ力技で相手をねじ伏せていました。それが、「柔術」として体系化されるといかにして相手の力を利用するかという技になりました。嘉納治五郎翁が創始した「柔道」は、殺し合いの柔術を「柔」の理論をそのままに、「道」へと昇華させたものです。ローマ時代、見世物の殺し合いのために生まれたレスリングとはまた違うわけですね。そこんとこ、はっきりして欲しいものです。

まあレスリングはレスリングで哲学めいたものはあるのでしょうが。

>神月姉さま
体操もそうなんですね。あまりそっちは詳しくないのですが……。

日本人はなにごとにも「美徳」とか「潔さ」を求めますね。セコイ手で勝つと、たとえルールに則っていても「あんなのは勝ったうちにはいらない」といわれるんですよね。欧州、中国のような土地は昔から争いが絶えませんでしたから、「勝てば官軍」な考え方になったのでしょう。それはもう文化や歴史の違いだからどちらが良いとか悪いとかないですが。でも、日本発祥の柔道くらいは日本的美徳を追及してもらいたいものです。

>針井の兄やん
お久しぶりです、兄貴。絶対食いつくと思ってましたw

レスリングもそうですが、欧米は目に見える数値や物質に力を注ぎますね。日本や中国のように本質を究めるというのとはまた違う。そんな価値観だからこそ、産業革命なんてのが興ったんでしょうけど。民族性、出ますね確かにw

試合後の態度、勝っても負けても堂々としているというのが美徳でしょうけどね。負けて潔く、というのもなかなか難しいんでしょう。今の日本人だって、負けて潔い態度取れる人間がどれだけいるのやら。

当てっこ、あれは何とかしないといけませんね。今の判定方法がずっと続くなら良いのですが、韓国のコムド団体が、フェンシングのように電子防具が導入してポイント制にしようとかほざいているみたいです。冗談じゃないですよね、全く。まあ韓国が「剣道は韓国発祥ニダ」とかいっても、剣道連盟もあまり抗議しないんですからね。自国の文化を守る気があるのやら。

チャットですか。武道チャットって、かなりコアだなw
2008.08.21 Thu 22:20 URL [ Edit ]

ご連絡です。 - 愛田美月

こんばんわ。

ブログをお引越ししました。

お手数をおかけいたしますが、リンク先の変更をお願いいたします。

ブログ名も美月のお部屋から美月のお家へとかわっていますので、そちらも合わせてお願いいたします。

ではでは、本当に連絡だけですが、この辺で~。
2008.08.30 Sat 22:19 URL [ Edit ]

どうもです - 俊衛門

>愛田さん
こ、これは放置してもうしわけありませぬ……。

了解しました、リンク変更しておきます。
2008.09.11 Thu 20:34 URL [ Edit ]

こんなところで武道~ - じょーもん

 こちらでは、はじめまして、おじゃまします。
 なんだ~武道好きなんてことまで一緒じゃないですか。なんだか一方的に親近感出ちゃいます。

 もっとも私はヘボな太極推手修行の身なので、ファソンがいま一つ理解しきれてないんですが、あの力を感じないのに体をもっていかれる感覚は独特ですよね。私は単純にボディコンバットで暴れてる方があってるようですが(鈍いので~)、極めたいのは当然こっちデス。

 これからゆっくり過去ログ読ませてもらいますね~♪
2008.11.01 Sat 13:13 [ Edit ]

いらさいませのコメ返し! - 俊衛門

>じょーもんさん
うお、じょーもんさんじゃありませんか。いや、ありがとうございます。太極拳ですか、中国拳法ってあこがれます。日本の武術しか経験ないので。今度いろいろ教えてください。

力の消失、面白いですね。その辺のメカニズムを描写すればそれはそれでSFになるかもしれませんが……ならんか。武術SFという新たなジャンルを作りたがっている、今日この頃w

またお願いします~。
2008.11.01 Sat 15:10 URL [ Edit ]
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