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第八回武術談義:武器と体の関係

2009.01.11 - 武術・武道
対銃火器戦闘をやる、と前回言ってましたが……すみません、予定変更で。銃火器となると、まだ知識不足が否めないのでもうちょっと調べてからやります。現在、軍隊格闘術やクラヴ・マガについていろいろ調べて降りますので。

んで、代わりといっては難ですが。

以前、じょーもんさんが「武器を扱う人にとって、武器は体の一部なのか、それとも道具に過ぎないのか」と掲示板に書きこんでいらっしゃったので、そのことについて今日は考察してみます。剣術使いとして、これは見過ごせない命題であるので。

さて、武器は道具か体の一部か? これは各々の武術・流派によって違ってくることでしょう。一般に、「~術」とついた場合は、武器を体の一部として使うことを教えていることが多い気がします。というのも、以前見てきたように武術の歴史はまず武器ありきであり、古代の武術は武器術を研鑽する方が多かった。「武器は手の延長」と呼ばれるように、己の手足と同等に扱えなければ、自在に操ることは難しかったのではないかと思います。剣術、槍術、弓術、鎖鎌術、手裏剣術、銃剣術、等々。武器を手にすることは、己の命をその武器に預けることであり、本来なら異物である武器を肉体として認識するまでに研鑽する。空手家が拳を鍛え、ムエタイ戦士が膝を凶器と化すことと同じことです。

自分の経験からいうと、自分は大学に入って、直心影流剣術を習い始めました。古流の剣術は、現代剣道とはまるで体の運用法が違います。まず、用いる木刀が通常のものよりも遥かに重く、大体日本刀の抜き身と同じ重さの物を使います。当然、最初は上手く振れません。が、形を練るうちに、段々と手に馴染んできて、重さも苦にならなくなってきます。重い武器というものは、最初は体がついていかなくて剣に振り回される格好になるのですが、何回も形を打ってゆくにつれて体の使い方を覚え、体にしみこませることができる。丁度、自転車に似ています。最初は上手く乗れなかった自転車が、何度か練習するにつれてバランス感覚を体得し、乗れるようになる感じです。

これは脳の作用にも影響しているようです。人間の脳は、自分の体を超えたものも体の一部として認識する柔軟性を備えています。脳が認識する、体の範囲を「身体図式」といいまして、初めに生まれ持った体を脳は「自分の体」と認識しています。しかし、この身体図式は書き換えることができます。自転車に乗れるようになったときは、脳内の身体図式に自転車という異物が汲み込まれ、あたかも自分の体の一部として機能させることができる。武器術もまた、異物である武器を研鑽し、肉体に取り込む。そのために形がある、と自分は認識しています。そして、武器を体内に取り込むことが出来れば、例えば武器を介して合気や発勁といった力の伝達を行うことが出来る。「武器は手の延長」とは、武器を手と同化させることであると認識しています。

ただし、弊害もあります。武器を手に同化させる、といってもそれを短期間で行うのは難しいということです。素人がいきなり刀剣、弓の類を扱ってもまともに使えません。武器を「手に同化」させるまで習熟させるには時間がかかります。戦国期には農民も戦に駆り出されていましたが、その場合比較的習熟に時間がかからない長槍などを使わせたということです。間合いの取れる槍で馬上の敵を突き、または叩く。その場合はそれほどの技術は要りません。「槍術」として槍を研鑽するというより、むしろ「道具」として使われていたともいえます。一つの軍をつくるのには、武器は道具として扱えるものが便利だったのでしょう。

近代兵器は、この理論に則っています。すなわち、「誰が使っても同じ作用を発揮する」ということ。わざわざ武器を肉体の一部としなくとも、引き金を引けば熟練の兵士でも新兵でも、等しく弾を撃つことができる。マニュアルに従えば、誰でも扱える、道具としての武器。もちろん、銃の扱いは難しく、実際にはまったくの訓練無しで撃つ事など不可能です。しかし、ボタン一つでミサイルを撃ち込める時代になった今、武器は個人の習熟度に関係無しに、等しく「道具」になるよう進化している気がしますね。将来は、ちょっと操作を覚えただけで簡単に人を殺せる武器が主流になるかもです。それはそれで嫌ですが……

さて、武器を手に同化させるとはどのようなことなのか。これは感覚的なことなので、個人によって違います。自分の経験からいえば、無駄な力を使わずに扱えるようになると「同化した」という気になります。重い木剣など、最初は腕にガチガチに力が入っていたのが、あるとき遠心力のままにスッと振ると非常に真っ直ぐに振れるようになりまして。ものすごく、感動したものでした(笑) また試合などでも、当初は竹刀を振るにもいちいち考えなければいけなかったのが、自然に体が動き、咄嗟のことでも反応できるようになると「武器が体に同化」した、と言えるのではないでしょうか。

ただ、一つの武器に習熟しすぎると他の武器が扱えなくなるということもあります。これは何も武器術ばかりではないでしょう。伝統武術家が、近代格闘技のルールに則った動きが出来ずに格闘家に敗れるのも、この辺の理由があることと思います。そんなわけで、昔の武術は複数の武器を扱う流派が多いです。武芸十八般といわれるように、あらゆる武器に精通している人間が「達人」と呼ばれたのでは。そして、武器の動きがそのまま素手に応用され、拳法や柔術といった徒手空拳に通じる、といったことは以前考察した通りです。もっとも、今では武器は武器、素手は素手であり、武器も「剣道」「銃剣道「弓道」「なぎなた道」というように独立した体系を持っていますからね。真の意味での「達人」は少ないでしょう。一応、拙作『監獄街』での、真田省吾はあらゆる武芸に通じている、達人に近い素養を持たせてはいるのですがね。ただ彼は精神が未熟だから(笑)

次回はいつになるか分かりませんが、銃火器について調べが進んだら書きたいと思います。それでは。
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Comment

はろはろ~ - じょーもん

お久しぶりでございます。どうぞ本年もお忘れなくよろしくでございます。
年末に兄を亡くしまして、そうでなくても執筆気分で
なかったところが、パソコンまで殉死してしまいまして(なんてこったい!)散々なスタートでした。

いやぁ、で、武器の談義なんですがねぇ、武器というのは自転車と似たような感覚なんですね。練習を始めたときは手に余るのに、乗れるようになれば乗れなかった時代には戻れないというか不可逆というか。
ちょうど顔文字とやらを最初に見たときに似ています。謎の記号の羅列だったにもかかわらず、一度顔に見えたらそれ以外には見ようがないのと同じですな。

うちの三人の娘たちですが、自転車の与えた時期も乗れた時期も違います。
もったいながって体より大きい自転車を最初に買った長女は、最初に練習しようとしたときに扱いかねて、練習から撤退して暫く乗ろうと言う姿勢を見せませんでした。でもって、次女には丁度サイズを買ったにもかかわらず、どうも乗る気は十分なのに練習量に対しての習熟ペースは惨憺たるもので、いまだに安全運転をしてるかどうかは微妙なところ。末っ子は「乗りたい」と言い出したその日に、わずか一回失敗しただけで乗れてました(なんてやつ)し最初から余り危なげがなかったんですよね。個人差もあるし、体の成長との兼ね合いもあるし、生まれついての資質もあるってことでしょうか。

今はちょっと騎馬状態で弓を引くときにの体の制御が、立射や座射とどれぐらい違うのかが気になって調べているんですが、なたなかしっくり想像できないんですよねぇ。アーチェリーは一時期はまってたことあるんですが、止まってても姿勢を整えるのがなかなか難しいのに、馬に乗ってやるってのがどうも(乗馬できないってこともあるんでしょうか)想像を越えてまして。

長々と失礼いたしました~

2009.01.23 Fri 15:01 [ Edit ]

コメント・レスの消失 - 俊衛門

>じょーもんさん
どうも、レス遅れてしまってすみません。お兄様が! それはそれは、本当にご愁傷様です。自分も最近、師を亡くして失意にくれておりました。心中、お察しします。

自転車はひとつの例ですが、武器を手に同化させるということは、言い換えればその武器しか使えない体になる、という危険もはらんでいるわけです。自分も、剣から杖に持ち替えたときはかなりてこずりました。また、家には万力鎖があるのですがこれまたなんとも扱いづらくてw 現代兵器が道具化しているのも、そういう影響かもしれませんね。

自分は昔、次女さんと同じタイプでしたねえ。乗る気はあっても、ぜんぜん乗れない。不器用というか、才能がないんじゃないかとw 剣道もそんな感じでして、段位の割には強くないのがワタクシという人間でございます。資質もあるでしょうが、まあある武術の先生に言わせれば「理論をつかめば誰でもできる」とのことですが……。

弓、は自分素人ですが馬に乗るとなると……腸腰筋の動きとも関連があるのでしょうかね。一度、やってみたいものです。
2009.01.28 Wed 14:41 [ Edit ]
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