『夜狗-YAKU-』 2-1~2-3まで更新
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「軍にいて、それでどこに?」
ショウキが訊くのに、加奈は生返事を返した。
「朝鮮半島にも行ったことあるよ、もっともわたしが行ったのは殆ど後片付けみたいなものだったけど」
軍、か。くしゃくしゃになったセブンスターを取り出して、一本咥える。
「禁煙だぞ、ここ」
「知らない」
火を灯して、ニコチンを吸い込む。どうせ館内の換気システムが煙を吸い上げてしまうのだから。やること為すこと、人がすることの後始末は全て、発達したテクノロジーがどこかで片付けてしまう。羊水に浸っている胎児を扱うように、何でもかんでも始末をつけてくれる。そういう風に出来ているんだ、
環境建築というのは。過保護というか、なんと言うか。その気になれば一ミリだって腕を動かさなくても生きて行ける、ここなら。
少なくとも、都市の内部では、の話だが。
「朝鮮も、“
中間街”も似たようなもんだった。でもまあ、サムライみたいな妙な連中がいないだけマシか。信じられる? 戦場の方がマシだって思えるんだよ」
「そうかい、まあ分からんでもないが」
と言ってほうじ茶をすすって
「お前さん、どうして“特警”に?」
ショウキが訊く。灰を落とす手を、止めた。
「何で、そんなことを」
「いや、だってあまりいねえだろう。セイラン・テクノジーの社長の娘ともあろう者が軍に入って、今度は“特警”だなんて」
「本当の父親じゃないよ」
と言って煙草の火を消した。
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世界観設定:日本
軍国主義、というわけじゃないですが2040年の日本には、当然あるべき軍隊があります。自衛隊という曖昧な武力装置ではなく、本物の軍隊。というのも、この時代の日本はアメリカとの安保を解消しており、そのため自主防衛を余儀なくされています。
2-2で少し触れていますが、2020年ごろから中国が分裂し、北東アジアは混乱をかかるようになります。北方領土、竹島、沖縄などの領土問題にも火がついて日本は再軍備、軍事の増強を余儀なくされます。しかし、近隣諸国の日本軍アレルギーはいまだ健在(というかイデオロギーとして残っている)ため、なかなか周辺との外交がうまくいかない。
さらに、移民受け入れと外国人参政権の認可により、日本の国政に中国人や韓国人も多く絡み、国内外とも複雑化の一途をたどって……みたいなバリバリ政治物にしたかったんですが、どうもそこまで書く技量はなく、匂わせる程度にorz まあ、メインはそこじゃないから、と言うことで。ええ。
ちなみにわたしゃ、思想的に右と言われますが国粋主義者じゃないです。そこんとこ、ヨロシク。
次回は水曜日に更新です。
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