【僕と彼女と彼女の笑顔】(タイトル捏造。
ねぇ、君はいつになったら、僕に笑いかけてくれるの。
あの日やったことは確かに悪いことかもしれないけど……
何度も謝ったよ! 僕は早く、君と今までの関係に戻りたいんだ。
いい加減、許してよ……
********
何度となく、彼女に話し掛けようとしたが無視されてしまった。
何がいけなかったんだ──
もしかしたら あのことだろうか。
君が牛乳飲んでるときにビヨンセのマネをしたのがいけなかったんだろうか?
――じゃあ・・・何が良かったんだ・・・。
本当に悪かったと思っているんだ。
こんなことで君を失いたくないと・・・
ぼくは前歯に海苔を付けた・・・。
********
いや、違った。
海苔ではない。日に焼けて黒ずんだリトマス試験紙だ。
なんでうちにこんなものが?
いや、それはいい。リトマス試験紙だろうが、中国産キムチ海苔だろうが、今はどうでもいい。もとからキムチ海苔なんかないけど。だって高いし、あれ。
それはともかく、ぼくは彼女の機嫌を、彼女の心を、彼女の笑顔を取り戻すため、彼女の隣に座り、先日録画したVHSを再生させた。
きっと君は微笑んでくれる。
いつまでも子供なんだからとつぶやきながら、あの無邪気で可愛いらしい笑みを、ぼくに向けてくれるはずだ……。
32型の液晶ワイドテレビに映る……ピングー録画映像。
ああ、微笑ましい。
ピングー。
どこまで愛らしいんだ。
ピングー。
なにを言ってるのかわからないけど、そこがまたイイ。
最高だよ、ピングー。
「いい加減、ピングーはやめなさいよ」
「じゃあ、ミッフィーにしよう」
そんなぼくは、今年で37歳になります。
・・・・・・・
そうだ、明日は彼女の誕生日じゃないか。
ピングーで若干機嫌を取り戻した彼女に、サプライズなプレゼントを渡して、もう一度あの頃のように笑い合おう。
ぼくは彼女をリビングに残し、明日――正確には後13分と迫った彼女の誕生日のため、プレゼントを探す事にした。
冷蔵庫の中身で……。
********
「キャラ弁だ、キャラ弁を作ろう」
冷蔵庫をのぞき込み、僕は決意を込めてそう口にした。
キャラ弁。
食材でキャラクターを作るという、あれだ。
「ピングー好きの彼女のために、作ってみせるぞ、ピングーのキャラ弁を。──あれ、ピングー好き?」
気づいた。
彼女はピングーが好きとはいっていない。
むしろいいかげんヤメロといっていたではないか。
ならば、僕にできることは、なにがあるというのか。
彼女の誕生日まで、あと五分を切った。
焦りばかりがつのり、絶望に頭をかかえ、天井をあおぐ。
その拍子に、僕の歯から、リトマス試験紙がはらりと落ちた。
まだついてたんだ、これ。
キレイ好きの僕は、腰をかがめてそれを拾いあげ……
……目を疑った。
黒かったはずの、リトマス試験紙。
それはいまや、虹色に輝いていたのだ。
「こ、これは……!」
「気づいてしまったのね」
声に驚いて振り返ると、かすかな嘲笑を浮かべ、彼女が立っていた。
********
彼女が気味悪いほど、静かに僕に歩み寄る。
僕は思わず後ずさり、開けっ放しの冷蔵庫に背中をあてた。
冷気は少ない。お手製の冷蔵庫カーテンは、なかなか使えるモノだな。と心の中でうなずく僕がいる。
って、そーじゃなくて! さっき僕は思わず声をあげてしまったが、実のところ、なにも浮かんでいなかった。それでも彼女の真意を探るべく、虹色リトマスもどきに視線をもどした。
そうだ、きっとここに何かヒントがあるに違いない!
そう考えた僕は、冷や汗を流しながらも必死に考える。
なんだ、なにが僕に足りない? ああ、誕生日の事も考えないと!
彼女はいまや目の前で怖い笑みを浮かべ、仁王立ちしている。
「あ、あのさ。忘れてたわけじゃないんだ」
「ウソよ! そんなトコ開けてるくらいだから、心の底から忘れてたんでしょう?」
「いや、これは、うん。あれだよ! ほら!」
僕は慌てて冷蔵庫の扉を閉める。
考えろ、僕! 自分を叱咤しながらも、僕は冷蔵庫から手を離せなかった。
はっと気が付く。そういえば、冷凍庫にすっごいの見つけていたのを。
すかさず冷凍庫を開け、一番上に乗っていた、一番でかいアイスの箱を取り出した。
「ほ、ほら! これって虹色じゃないか?」
「それがなに? それ、私がさっき買ってきて、入れさせてもらってたのだけど?」
……まずい。たしかに僕が買った記憶はなかった。
あまりにもうまそうで、パニックになろうとも差し出すべき物じゃなかった。
失敗だ。これじゃない。
「し、知っているとも。ものすごいうまそうだと思ってさー、どこで買ったの?」
彼女は答えず、僕をじっと見つめてくる。
――彼女の誕生日まで、あと四分。
********
あああ、どうしよう!
ぼくはとりあえず、こう言った。
「虹色アイス、ナァーイスチョイス」
彼女に向かってウインクし、グッと親指を立ててみたのだが、彼女の反応はすこぶる冷たかった。アイスとナ(ア)イスをかけたのに。ついでにナイスとチョイスもかけたのに……。ダメっすか? ダメっすよね? はい、すみません。っつうか、ギャグになってねぇ。
ぼくは、彼女の表情を見て、心の中で謝った。親父ギャグをかましている場合ではない。見ろ、彼女の顔を。今や仁王像もかくやという顔をしているじゃないか。やばい、やばすぎる。彼女の誕生日のことも考えないといけないのに!
そう、思い出せ。彼女は虹色のリトマス試験紙もどきを見たぼくに、『気づいてしまったのね』そう言っていた。ぼくは彼女にとって、気づいて欲しくないものをみつけてしまったのだろうか? でも、彼女の性格を考えればむしろ逆かもしれない。
早く気づいて欲しかった? それはなぜ? 誕生日が明日、いや、三分後だからか?
そして、リトマス試験紙にヒントが隠されている。っていうか、そもそも何で黒から、虹色に変わるんだ。それとも、虹色に変わらなきゃならなかったのか……?
「ねぇ、分からないんでしょう? 本当は」
彼女の冷ややかな声がぼくの耳を打った。やばい、これは本当に怒っている。ぼくは、彼女から目をそらした。ああ、やばいやばい。考えろ、考えろ。考えるんだ!
虹色。にじ……。ニジ? あれ、もしかして。しかも、黒から、虹。
あ! そうか。このアイスもヒントなのかもしれない。ぼくの考えが正しければアイスも虹色じゃないといけなかったんだ!
ボーン。 ボーン……。
壁掛け時計から、十二時を告げる音が部屋に鳴り響いた。それとともに、彼女の口から溜息が漏れる。
「わたし、もう帰る」
ぼくは背を向けた彼女を後から抱きしめた。
「け、結婚しよう! クロ」
クロ。それは彼女のあだ名だ。そう、彼女の苗字は黒澤。ついでに言うと、ぼくの苗字は虹川。そして、ぼくのあだ名はニジ。
彼女がぼくに期待していたのは、プロポーズだったのだ。リトマス試験紙は、黒色から虹色に変わった。
つまり、彼女は黒澤から虹川に変わる事を望んでいたんじゃないか?
そして、虹色のアイス。虹アイス。にじあいす。ニジを愛す。
このアイスは、ぼくへの愛を表す為に彼女が買ってきたものなんじゃないのか?
きっと、そうだ。そうに違いない!
彼女がぼくの腕の中で身じろぎした。そして、ぼくを振り向いて口をひらいた。
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こっからが徳山パートです。
彼女の型のいい唇が動いた。
「それだけ?」
「え?」
なんだ? まだ何かあるのか? 一体なにを……。
ハッ、そういえば! なぜ「クロ」を表現するのにわざわざリトマス紙を使ったんだ!? 普通に海苔でよかったのに! なぜリトマス紙なんだ。
原点に帰って考えてみよう。リトマス紙は本来黒いものか? 違う。リトマス紙は赤や青になるものだ。
「赤……青……」
彼女はするりと僕の腕から逃れ、少し距離を置いてこちらに向き直る。
まさか!
「あ、アカネとはもう完全に手を切ったからな! ってか、アイツ新しい彼氏見つけたらしいし!」
「……」
「青井とはそもそも付き合ってなかったから! 周りが勝手にウワサしてただけだからな!」
茜と青井。以前、僕と付き合っていた(と言われていた)二人の女。あいつらではなく、自分を選んでほしいということだろう。赤でも青でもなく、黒を選んでほしいってことだ!
そして黒は虹になる!
「僕が……僕が選ぶのは、クロ。お前だけだ」
「……」
彼女はうつむき、指先で服の裾をいじっている。前髪のせいで彼女の表情は見えない。が、わずかに方が震えているのを僕は見逃さなかった。
涙をこらえているようにも見えた。その姿が急に愛おしく感じられた。
「僕と結婚してくれ!」
捻りもなにもないストレートな言葉。これで全てが解決する!
そして彼女は言った。
「だが断る」
……。
「なにィィーッ!?」
えッ、ちょっ、ちちちちち違うのか!? プロポーズとか関係なかったのか!? だとしたら…………サ・イ・ア・ク。
「もう、本当にバカね。何を勘違いしてるの?」
「え?」
彼女の口元が、かすかに笑ったように見えた。決して冷ややかではない笑みだ。彼女が一歩前に進み出て僕の手を握った。
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(以下黒雛パート)
彼女は囁くように言葉を紡いだ。
「わたし、ニジのこと大好きよ? 大好きすぎて、どうしてもわたしだけのニジでいてほしかったの。だから……」
彼女の声はか細く、今にも消えてしまいそうで。
そんな彼女を、僕は不安と期待を込めてじっと見つめる。
「ニジがわたしにぴったりの男になるように、眠っている間にちょこっと人体実験したのよ」
彼女が、笑った――。
昔のようなふんわりした笑顔ではなく、どこか小悪魔的な微笑。
……っていうか、え、人体実験?!
お手軽にできちゃうわけ?!
っていうか、マジでえ?!
体中に嫌な汗が噴出し、僕は急いで壁に掛けてあるルームミラーの前に立った。
どこか異常な点がないか、くまなく調べてみるも特にこれといった変化は見あたらない。
そろりと彼女に視線を送って、僕はおずおず口を開いた。
「特に……変わったところなんて……」
……変化……変化?
……ハッ! そういえば、歯に付いていた黒ずんだリトマス紙、虹色に変化していたじゃないか!
「そうよ、ちゃんと人体実験が成功したかどうか、確かめるためにリトマス紙をこっそり付けたの。気付いたでしょ? リトマス紙が虹色に変色していたのを。『ニジ、メルヘン化計画』は成功したはずなのに……どうしてなの?!」
はじめは落ち着いていた彼女だが、次第に声を荒げ、髪を振り乱し、怒りを爆発させたのだ。
「今日はわたしの誕生日よ?! わかるでしょう? メルヘンでファンキーなプロポーズが全て! メルヘンじゃないあなたは、デコのほくろを取ってしまった、せん●さおと同じよーーー!」
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(以下、卯月パートです)
なんてことだ!
ほくろを取ったせん●さおと同じだなんて……。僕はそこまで落ちぶれてしまったのか!?
もはや僕には何も残されてないというのか!?
いや、そんな筈はない。僕はにやりと笑った。
「見せてあげるよ、クロ。君への愛を。君からもらった力を使って」
言われてみれば、全て納得がいく。
先ほどから感じていたこの不可思議なエネルギー。体の奥底から迸る力は、彼女が与えてくれたものだったのだ。
思わずキャラ弁を作りたくなってしまうほどのメルヘンちっくな気分も。奇妙な心の昂ぶりも。
「うぉぉぉぉ!! 来るがいいっ!! 地中に眠る小さき命よ!! 我が身に宿って、その命を芽吹かせろぉぉっ!!」
床に手を当て、僕は力のあらん限り叫んだ。
そこからどんどん力が流れ込んでくる。ここは二階で、下は地面じゃないとか、そんな小さなことはどうだっていい。なんとなくその気になればいいのだ。
やがて、渦巻くエネルギーの全てが僕の頭に集まった。今だっ!!
自然と浮かんできた、力ある言葉を叫ぶ。
「ファンキー・モンキー・メイクアーーーップッ!!!!」
途端、僕の頭に変化が起こった。
ルームミラーに映った己の姿を見て、僕はにやりと笑う。
むくむくと膨らんでくる髪の毛――狙い通りだ。
「ま、まさかっ!? あなたは一瞬で理解したというの!? あなたに与えた能力――ミスティック・ヘア・アレンジメントの全てをっ!」
驚愕の声をあげるクロを優しく見つめ、僕はゆっくりと立ち上がった。
「もちろんさ、クロ」
今や僕の頭は通常の5倍以上の容積に膨れ上がっている。
それはひとことで言うとアフロだったが、無論、ただのアフロではない。
メルヘンアフロ。とでも言おうか。
薔薇。薔薇。薔薇。
そこかしこに薔薇が咲き乱れているのだ。匂いたつような真っ赤な薔薇が。もこもこの髪の毛に包まれて。
これこそが僕の得た能力――ミスティック・ヘア・アレンジメントの力なのだった。
「今こそ言うよ、クロ。愛してるよベイベー」
アフロの中から一本の薔薇を引き抜き、クロに差し出しながら僕は言った。
「ニジ……」
瞳を潤ませ、クロは僕を見つめ返す。
今度こそ――僕は確信した。
だが次の瞬間、その自信はあっけなく崩れ去る。
「まだよ。まだ足りない。メルヘンもファンキーも、まだ足りないわっ!」
首を横に振って拒絶の意を示すクロ。
なんだって!? このアフロじゃ足りないと言うのか!?
僕は驚愕した。
が、一瞬で立ち直る。
もっと咲かせて欲しい。そう言うのなら咲かせてみせようじゃないか。メルヘンも。ファンキーも。
それこそが、僕の愛の証明だっ!!
僕は再び力を集中させた。するとそれに呼応するかのように、アフロも巨大化を始める。
どんどん膨れ上がっていくアフロ。
何故か一緒に伸びていくモミアゲ。
「これでどうだクロッ!!」
「まだよ! まだ足りない!」
「うぉぉぉっ! ど、どうだクロッ!」
「もう少し! あと一声!!」
「うぉぉぉぉぉっっ!! こ、これでバッチリだろ、クロ!?」
「う~~ん、残念っ!」
残念ってなんだぁぁぁぁぁぁっっ!?
もはやアフロは、天井にまで到達する勢いだ。
モミアゲは、縦巻きロールと化している。
正直、立っているのも辛い。重すぎる。意識が朦朧としてきて、がくっと膝をつく。
だけど、諦めるわけにはいかない。僕は一心不乱に祈った。
神様。風の神様。どうか、みんなを守って。いやむしろ僕を守って。
神様。ピングー様――――――!!
その時。
辺りが七色の光に包まれた。
******************
(ここからきよこパートですー)
そう、諦めるわけにはいかない。
彼女に愛を伝えるために、何が何でも僕はファンキーモンキーベイベーにならないといけないんだ。
七色に包まれた室内で、僕は頭がだんだん軽くなっていくのを感じていた。
目の前によぎるのは、ピングー様の笑顔。
やっぱりかわいいよ、ピングー様!
なに言ってるかわからないけどっ!
そこがいいいいい!!
室内に充満した七色の光はゆっくりと収まっていく。キラキラと輝き、僕の視界を眩ませる。
頭が軽い。もやがかかったようにぼやけた僕の頭がようやく動きを再開させた。
ズル、と音がする。ズル、ズル、と。
何の音だ? と頭を上げた瞬間、それは起こった。
僕の大事なアフロが、ズルズルズルズル……。
――落ちた。
そんなまさかの、つるっぱげ。
「ずるむけしたーーーー!!」
さようなら、メルヘンアフロ……また会おう、メルヘンアフロ……。
そんなことより、彼女はどこに?
僕のアフロとアフロから生えた薔薇で覆いつくされた室内に、彼女の姿は見えない。
まさか……!
僕のアフロとアフロから生えた薔薇で生き埋めに!?
「クロ! クロ! どこにいるんだ!」
僕は必死になってアフロと薔薇をかきむしり、彼女を探す。こんなアフロにつぶされたら、彼女の命も尽きてしまうかもしれない。
薔薇の棘が僕の手を傷つけ、洋服を破る。
茨(とアフロ)の世界で、愛する人を探す――まるで童話の「眠れる森の美女」のようではないか。
「メルヘンだ!」
これこそが彼女が求めたメルヘンなのだ!
僕は彼女が待っていた王子様で――茨(とアフロ)からお姫様を救い出すんだ!
ファンキーに関しては、ほら、モミアゲが残ってるから。
1メートルもあるモミアゲ、しかも縦ロールなんて、ファンキーだろ?
しかも、頭にモミアゲをかぶせれば、海原はるか・かなたの物真似だって出来る!
頭の上でチョウチョ結びにだって出来るんだぜ!
かなりファンキー! 最新ファッションまっしぐらだ!
そこの君、ぜひ明日から真似してみてね☆
おっと遊んでる場合じゃない。
茨を掻き分け、アフロの海に潜り、彼女を探す。
「ニ、ニジ……」
消え入りそうな、けれど確かに。僕に救いを求める姫――クロの声を聞いた。
*********
この先俊衛門のターン
声のする方に向かって、僕は走った。茨(とアフロ)が、お気に入りのシャツを裂く。
ちなみにシャツの柄は、去年フリーマーケットで買ったピングーTシャツ。1500円也。ごめんよピングー。でもやっぱかわいいよピングー。何を言っているかわからないけど以下略。
略すんなボケナスが、とかいう天の声が聞こえた気がするけど積極的に無視しよう。ポジティブシンキン。
僕にとってはクロこそが、唯一絶対なんだから。……いやまあ、ピングーとどっちがと言われたら、そうだな0・2ポイント差でクロだ。この場合の審査基準は国際ルールにのっとり、芸術点と技術点を審査員が評価する。どんな審査だよ、というツッコミは無しの方向でお願いしたい。そんなものは電気羊が見るアンドロイドの夢くらいどうでもいい。うん、わかりにくい例えだ。
「電気羊は夢なんて見ないわよ!」
と、背後からクロの声がした。振り返ると、クロの姿が。無事だったようだ。僕はほっと胸をなでおろした。
ただ、なんか様子が違う。
「無事じゃないわよ、この薔薇。便所のフレグランスで窒息するかと思ったわ」
あ、あのー……クロさん? どうしてそこでトイレの芳香剤を引き合いに? 天然の薔薇と化学香料はあなたの中では同じなんですね。って、女の子がそんな下品な言葉を使っちゃいけません!
「書き手の語彙が少ないから、しょうがないでしょ」
それ禁句だからっ! 読んでいる人が萎えるでしょう。いや、ツッコむべきところはそんなことじゃなくてだな。
「クロ、それは!」
クロの体は、宙に浮いていた。正確には、無数の茨が巻きつきニジの体を持ち上げている。というか、このアングルやばいんですけど。結構きわどいところまで見えそうなんですけど。あれか、ここを書いている執筆者もついにネタにつきてお色気に走ったか。読者に媚びてアクセス稼ごうって腹かいドチクショウ。
というか、これ以上メルヘンなことってあるのか? 僕がそう言うとプリンセステンコーのイリュージョンよろしく宙を舞うクロが、上空から叫んだ。そんなに天井高かったっけ?
「ニジ、まだ足りないわ! メルヘンも、ファンキーも」
さいですか。でも僕としては十分メルヘンかつファンキーだと思うんだけどね。このもみあげとかもみあげとか、特にもみあげの辺りとか! 大事なことなので3回言いました。普通は2回しか言わないんですよ、奥さん。出血大サービスです。
「どこが、どう足りないんだ!」
僕はすっかり毛根様がご逝去された頭を抱えて、悩んだ。普通、茨の森の中で眠る姫を、王子がちっすで起こすとか。彼女の望むメルヘンは、そういうもんじゃなかったのか?
その時、薔薇の花びらが風に舞い上がった。大量の花びらは、空中で一つに集まり始める。それが、段々と輪郭を帯びてきた。黒い翼が、現れ始める。
そうか、つまりはそういうことか。
姫を救い出すまでに数々の強敵を倒さなければならない。どんなお話だって、王子様はすんなりと姫のもとにはたどり着けない。きっとこの塊も、なんか巨大なドラゴンとかそういうのになって僕がそれを倒す。そして姫(クロ)を救い出して、ハッピーエンド!! おお、なんとメルヘンな。これが、彼女の望んでいたメルヘンなんだな!
集まった花びらが、一つの生き物に変化した。
ドラゴン? ガルーダ? ケルベロス?
花びらの集合体は……巨大なピングーになった。
ごめんなさい。全力で土下座ります。マジすんません。
もうこれは死んで詫びるよりほかない。ちょっと腹かっさばいてきます。誰か介錯をお願いします。
次はチヤ姐、よろしこ。
一応以下ルール
+RuLe+
●次の文章に、又は次の会話文に繋がる様に話を続ける事。
●短くても長くても、会話ばかりでも文章だけでもOK。
●多くの人に回しても大丈夫です。
●恋愛小説になっても、同性愛になってもOK。全ては貴方の文章で変わります。
●視点は自分好みで変えて下さって構いません。
●前の人の続きから書く場合は、前の人の文を少しだけ前置きとして入れて置くと他の人が書きやすいかもしれません。
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