以前、蹴り技というものはどうなんだろうという話をしたのですが、それに関して空手家早村さんより蹴りに関しての考察を頂きました。以下、チャットより一部抜粋
自分は突きより蹴りの方が得意です(断言
何でかというと、やっぱり体格と体力の差というものがあるので、威力のある蹴り出ないと相手の勢いを止められないというのがあります。一般的に突きだと体重の3倍、蹴りでは体重の5倍の威力になるらしいです。自分の体重だと(けして軽くはないですが)、体格のいい男性相手だと、足を振っただけで吹っ飛ばされる恐れがあります。そのくらい蹴りってのは突きより威力あります。ただし、弱点はどうしてもモーションが大きくなってしまうこと。体重移動が重要なので、どんなに気をつけてもどうしても大きな動きになってしまうんですよね
だから、重要なのは、というか自分が普段試合中にどうするかというと、コンビネーションです。技の連続で相手の隙を作り出し、死角から打ち込む。試合理論ですが、きっと実戦でも同じはずです。大技打ち込むには隙をつくる。これは基本ですね。(過去ログより)
なるほど、と言う感じです。確かにモーションの大きい技というものは隙が大きい、ということですね。ということは、小さく突きを打ったりして相手の隙を誘うといことでしょうかね。
自分は、蹴り技の修練はしたことないのですが、タイ式剣術の「クラビー・クラボーン」も両手にもった刀剣で相手を牽制して、隙を突いて蹴り、という術式が多かったと記憶しています。この蹴りの体系が今日のムエタイの体系へと独立した、とどこかに書いてあったような……それと似たようなことでしょうか。コンビネーションが使いこなせれば、威力のある蹴りを使いこなせるということ。勉強になりました、ありがとうございます早村さん。
さて、この「蹴り」なんですが自分なりに調べた結果、どうやらその武術が生じた環境にも左右されるということもあるみたいです。
足技に特化したムエタイ、その故郷タイでは、南洋ということもあり比較的皆薄着で半ズボンを着用した生活をしている。すなわち、蹴りを繰り出し易い、ということを書籍で読みました。なるほど、と言った感じですね。確かに蹴りを繰り出すには、ゆったりとしたズボンタイプの着衣が望ましいように思えます。テコンドーも、なぜあれだけ足技が発展したのかというと以前述べた通り、軍事教練に取り入れられたからです。
一方、日本の武士は袴を着用していたこともあり、あまり蹴り技は発展しなかった。当流の小太刀術に、前蹴りを放つ形がありますが回し蹴りや踵落とし、なんて派手な蹴りは袴では難しいでしょう。袴はそもそも、膝の動きを読まれないための物であり、間合いを悟らせないというものでもあります。剣術を中心に発展して来た日本武術にとって、間合いの攻防がそれだけ意味を持っていたということでしょう。
また、そもそも日本では「蹴る」という行為を非常に穢れたこととしていたみたいです。合気道の開祖、植芝盛平翁は弟子が蹴り技を修練していたところ「蹴りなど使うな、汚らしい」と怒鳴ったと言います。文化、思想によっても武術というものが変わっていった、武術からその国の文化や歴史を読み取るというのもまた面白いかもしれませんね。
また何かありましたらいろいろ教えてください、早村さん。
では、次回は対銃火器戦闘について。PR