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武術談義番外編:刀の強度

2008.06.11 - 武術・武道
前回の武術談義で、きよこさんが「日本刀はもろいんですね」とおっしゃっていました。まあ、確かにあのような書き方だと日本刀はもろいと思われるかもしれません。ちょっと今日は、第二回の補足説明をさせていただきます。

巷ではよく、「日本刀は2,3人切ったらだめになる」といわれますが、本当にそんな脆かったらまず武器として失格なのです。日本刀は、硬さから来る脆さをいくつもの手法でカバーしています。

切れ味のよい刃はこぼれやすいという側面を持ってますが、日本刀という刀は軟鉄を芯に、いくつもの鉄を重ねて延ばし、作られています。柔らかい鉄を鋼で包むことで、強靭さを増しているわけです。
それと、日本刀独特の反り。馬から下りて歩兵主体になった江戸期以降も、なぜ日本刀から反りがなくならなかったかと言うと、刀が受けた衝撃をあの峰の部分で殺していたわけなんです。衝撃をうまく逃がすことで、刃へのダメージを減らしていました。

また、「人間の脂で切れなくなる」といわれますがこれは本当です。一回斬れば、刀は切れ味が悪くなります。包丁も、生肉切ったら切れ味が悪くなりますね。居合いの世界では、刀についた血糊を振るい落とす「血振り」という動作を行います。また、たとえ切れ味が悪くなってもちゃんと刃筋を立てて斬れば斬れないこともなかったとか。


このように、日本刀も武器である以上耐久性も兼ね備えていました。しかし、歴史を紐解けば「2,3人切っただけでだめになる」刀は存在しました。江戸期にかけ、徳川泰平の時代になると刀は使われなくなり、粗製乱造品が多く出回りました。鉄砲の伝来により刀は徐々に合戦では使われなり、刀は美術的価値を高める方向にいったということです。耐久性よりも見た目の美しさを追求するようになったというわけですね。

もちろん、武器としての刀は作られていました。しかし、日本刀は一振り作るのにかなりの技術力とコストを要するのです。そのため、伝統工法でつくられた刀とは別に簡略化された工法でつくられた刀が増えていきました。その最たるものが「昭和新刀」、いわゆる軍刀です。近代になり、刀などの接近武器は完全に廃れました。旧日本軍は将校クラスの軍人には軍刀を支給していましたが、それは主に指揮刀としてであり実戦を考えて作られたものではありません。スプリングを鋳潰して型に流しただけ、という刀とも言えないような刀、それが昭和新刀なのです。当然、こんな刀じゃ100人はおろか1人だって斬れませんわな。

しかし、満州事変の後、当時の満州国で「満鉄刀」という、実戦用の軍刀がつくられたという記録が残っています。これは、伝統的日本刀の工法とは違う方法でつくられた刀だそうですが、残念ながら工法は伝わってはいないようで。寒冷地でも抜群の強度と切れ味を誇ったそうな。(厳寒地帯では刀は脆くなる)

さて、現代に目を移してみましょう。現代で刀を使う機会といえば、居合いや古流の型稽古、斬ってもせいぜい巻きわらぐらいなものです。まず、斬りあいなんてありません。あったらえらいこっちゃ。よって現代刀、特に試し切り用の刀は昭和新刀のような安価な刀を使う場合が多いです。(昭和新刀でも巻きわらぐらいは切れます。日韓親善武術大会では、演舞に用いられたそうです)
居合い用の刀、これは模擬刀を使うことが多いですが真剣を使う場合もあります。居合い刀は特に、振ったときに音が出やすいよう刃を薄くしたててあります。まあ、戦国時代だったらそんな刀使ったら真っ先に討ち死にでしょう。

これは、決して現代の刀工の腕が悪いというわけではありません。日本刀は最良のものを作るのに、熟練の技、最高の素材が必要になります。とにかく、コストがかかるのです。あるナイフ職人が、ナイフ作りに日本刀の手法を取り入れようとしたが同じ材料で倍の値段と時間がかかると判断し、断念したという話があるくらいです。

それでも、ちゃんと伝統工法で作られた刀はあります。そうした刀を作って伝統を守り、後世に伝えてゆく現代の刀匠たちには敬意を表したいものです。
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