1941年12月8日未明、日本海軍が真珠湾を攻撃したことによりアジア・太平洋戦争が開戦する。67年前、外務省の手違いで「騙しうち」の汚名を着せられた奇襲作戦により日米が相見える事となる。
戦争について語るとき、現代人の反応は2種類に大別される。日本はとことん残虐で非道であったと主張する人間と、無関心な人間。大抵、そういう人間はアメリカ側の、「原爆は、真珠湾の報い」というデマゴーグを鵜呑みにしてしまう。しかし、当時を生きていた人間にとってこの真珠湾が与えた世界への影響は大きかった。それは初めて、アジアの有色人種が欧米に銃を向けた瞬間でもあった。
当時、アジアの国々は次々に欧米の植民地となり、日本とタイ以外のアジア諸国は全て欧米の植民地になっていた。だが、日本が欧米と戦火を交えたことで、アジア諸国に独立の気運が高まった。だが、ご存知の通り日本は戦争に負けて悲惨な道を辿ることになる。なにより悲惨だったのは、日本人が歴史を学ぶことを手放してしまった。
現在、日本のしたことは全て悪とされる。戦争は相手あってこそであるのに、日本のみが悪とされるようになってしまった。GHQのネガティブキャンペーン、中国共産党の反日キャンペーンにより「戦争を起こした日本は全て悪」とされた。もちろん、日本軍は無知であるがために戦争犯罪を犯したのは事実である。だが、そうした負の側面ばかりが目立ってしまい、戦勝国の犯罪は見過ごされた。日本がなにをしたか、戦後東南アジア諸国で、日本兵が他国の独立のために戦ったことなど知らない。アジア解放という目標を、建前ではなく実際に掲げていたことは知らない。
日本を攻撃し、悪と断じた戦勝国が今何をしているか。中国で年間、どれだけ少数民族が虐げられているか。自らは日本を「東洋鬼子」と断じて被害者を装い、自分達の加害の事実を隠している。ベトナムで韓国軍が何をしたのか、調べて見るといい。先の戦争を、すべて「正義の勝利」としたアメリカは、あの大量殺戮すら正義としている。イラクで彼らがしたことすらも。
「本当の被害者、ってのは声を上げることも、自らの境遇を訴えることも出来ないもんだ。大抵は、時代に埋もれて黙殺される。苦しいとも、辛いとも言えずにな。声高に、自分たちが被害に遭っていることを主張できるもんじゃない。少なくとも、彼らと同じ時、同じ場所にいない俺たちが口に出せることでは、絶対ない」
『夜狗-YAKU-』で、ショウキに言わせた台詞です。日本が悪い、日本人は悪である。それを同じ日本人までが一緒になって唱え、そのせいで日本人は世界一盲目な民族になってしまった。チベットのこと、オリンピックが始まるまで日本のメディアは殆ど報じてこなかった。イラク戦争が始まると、保守を気取る知識人たちはこぞってアメリカを讃えた。世界でどれだけの血が流れようと、無関心な日本人。見せ掛けの、与えられた平和に目が霞み、世界中で滅び行く民族のことを知らない。世界で、そうした名も無い人達が、声を上げることなく死んでゆく現状を知ろうともしない。
そうした者達を守るために、先人たちが死んでいったことも知らずに。アジア解放の礎となった日本兵――もちろん、そういう人間ばかりじゃなかったけれども――彼らのことを思わずに、日本人は全て悪だといってその霊を慰めることもしようとしない。
監獄街や夜狗の世界というのは、そういう被害者達の物語です。虐げられている、そのことを誰にも知られない人々。省吾やユジン、“中間街”に住む人間たちの声を代弁したくてああいう世界を描いています。そして、これからもああいった世界を――声なき被害者たちの物語を作りたい。まだまだ不十分だし、自分はまだ世界を知らない。だから、SFとして人類に警鐘を鳴らしつつ声なき被害者たちの声を代弁したい。そう願い、自分は文章を練る。
なんか重苦しい話ですみません。戦争のことになると、やや饒舌になります。で、こうしたことを言うと「右翼」と罵られるんですよね。哀しいことです。
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